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中子製造への挑戦
ユニオンパーツ工業中子製造 男たちの挑戦  −第5章−

鈴木室長

「今後のSM事業部の夢は?」

 無人化ですね。まだ取り組めるものが多いです。割れ物ですから割れていないかのチェックも無人化にして、より精度の高い製品納入が目標です。

「今後の開発はロボットとかセンサーの開発待ちなのでしょうか?」

 いえ、既にあるんですよ。でもまだ高額過ぎるんです。安くなってきたとはいえ精度が高くなく、センサーにも使用環境条件が多過ぎます。
バリがあるかないかもセンサーで確認したいが、中子は光を吸収してしまう為に光学センサーも使いにくく精度が出ないので、費用に見合っていないのです。

 無人化の一番の狙いは作業環境対策です。熱い臭いをクリアしなければならないが、人がいなければ作業環境対策は必要なくなります。
究極的には完全無人になるべきでしょう。

「開発したものを外に売ることもあるのですか?」

 今は社外に売るつもりはありませんが、技術は売れると思っています。
今後は、後輩達が自分達で開発し、販売するというのであるなら、あえて否とはいいませんが、私個人としては、社内マシンの更なる開発をしていきたいのです。
まだまだ社内にもやるべきことがたくさんあるんです。
私個人の考えとしては、造型機そのものを開発し外販するよりも、スズキさんから一層の信頼を頂けるよう、コスト面では外国製品に対抗でき、さらに納期面でもより速く、品質面でもより安定した中子を製造出来るように、社内の製造設備全体のさらなる自動化に取り組んでいきたいと考えています。

「スズキさんとともに伸びてきた会社といえますね。」

 そうですね。スズキさんとの関係がなかったら小さな中子屋でいたと思います。
また、口幅ったいですが、スズキさんにも貢献出来たと思っています。
スズキさんの軽自動車のシリンダーヘッドの中子は、100%うちで作らせてもらっています。

「町を走るスズキさんの軽自動車のシリンダーヘッドの中子は100%ユニオンパーツ工業製、そう考えるとうれしいですね。」

 いや特別には思いませんが、中子というのは鋳造された後、工程の中で無くなってしまうものです。
うちの技術を使って良いエンジンが出来ている、その仕事をやらせてもらっているという喜びと誇りの方が大きいです。

「今後のスズキさんとの関係については」

 輸送コストと破損ロスを無くすことからもスズキさんの内製で中子が出来ることが理想ですが、そうはならないようです。
内製というのも良いことばかりではないが、可能性はあります。
もしそうなっても、ユニオンパーツ工業の技術は継承されていく必要があります。
今求められているのは我が社の技術です。
造型機は買うことが出来ても、金型から良い製品までを一環して製造が出来ているのはユニオンパーツ工業だけ。ここに、技術屋集団としてのユニオンパーツ工業への期待を頂いています。
典型的なのは、中国へ工場進出するスズキさんが、現地での中子製造に関してはユニオンパーツ工業の技術を求めて頂いていることです。そこで、機械から製造まで一環してのアドバイスと、現地立ち上げの指導までを担当させて頂いています。
中国での安定供給についても、我々のスタッフが現地入りして担当しています。
それは、中国に一つの産業が生まれる手伝いでもあります。
現地の環境に合わせる必要もあり、大変な仕事ですが、スタッフが「やりたい!」という限り、現地で手伝わせるつもりです。

「オレにとって中子とは」

 取り組むべき一つのものだった。夢は、どうせやるなら日本一になりたいと考えた。鋳造などするつもりもなく、繊維関係にいきたかったが、中子に出合った。スズキアルトからのスズキさんの躍進の中で、取り組むべきものが多かった。それがあったから挑戦を続けられたんだと思います。

「ユニオンパーツ工業は日本で有数」

 材料の砂の使用量では、ある時期まで日本一だったこともあります。
大手さんは内製しているから別としても、中子専門としては有数の会社です。
スズキさんが外注しているというチャンスを生かし、ここまでやることが出来ました。

「最近の中子の需要は?」

 今まではエンジンだけでしたが、最近はバイクのフレームなどにも需要があります。デザインなどが多用化したことで、アルミ用の中子なども納めています。
でもやはり、メインは鋳造で出来るエンジン用ですね。
良いエンジンを作るのは良い中子ありきです。

「エンジンの中子を作るということは、車の心臓部であるエンジンの更に中心を作ることになりますね?」

 エンジンの性能に関することですから、写真なども見せられないものです。でも、中を支えるというのがいいですね。
性能を支える中身が、エンジンには一番大切。
エンジンの鋳造後に壊されてしまう中子は、また再生使用されます。
今後、鋳造技術の広がりに合わせて、中子自体の用途が広がりそうですね。

「ライフワークですか」

死ぬまでですね。