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中子製造への挑戦
ユニオンパーツ工業中子製造 男たちの挑戦  −第4章−

搬送箱
中子の搬送用箱










造型機
造型機

「スズキさんが中子を外注にしてその開発をさせるのは面白い方法ですね?」

 そうですね。今は全体的にそういう時代になってきていますね。内作より外作のほうが得だという考え方になってきました。それは、コストの問題や環境対策でのメリットがあることが理由にあげられます。
それに、熱い臭いという工程を持ちたくない。シェル中子である限りその要素は付いて回りますからね。
早くからスズキさんが中子を外注にしていたことで、ロットでの発注をもらい、こなしていく為に、自動化への開発・導入が進みました。スズキさんとの関係があったことが、ユニオンパーツ工業が開発力を高められた大きな要因です。
とは言え、その開発を社長が自由にやらせてくれたこと、全てを任せてくれたことが大きな成功理由です。

「やりがいがある仕事ですね?」

 我々も、ある程度規模のある会社にいくのが良いのか、うちのような会社が良いのか考えることがあります。大手の場合は枠にはめられてしまいがちですが、うちのような会社ならば一人でいろんなことが出来ます。
広く浅く技術を持つことも出来ますし、専門的に突き詰めることも出来ます。
自社で出来ない開発はメーカーと組んでやることも出来るんです。

前述の安川電機さんは、一般的には代理店との取引しか出来ないんです。当社に対して特別に安川電機さんが全面協力してくれたのは、背景があります。
ロボットが自動車産業に出てきてから、すでに溶接、塗装などの工程には導入が一巡してしまっていました。更に自動車産業をターゲットとする場合、後はどこに売れるかというところで目を付けられたのが、中子だけでなく金型を使う限り発生する、バリ取り作業だったんです。
そこでユニオンパーツ工業と安川電機さんのテーマが一致したんです。お互いのタイミングも合いました。
そうしてパートナーシップが生まれたんです。

「チャレンジしたことは?」

 バリ取りをロボットで行う為には、バリをどう標準化していくかが造型機側に必要とされたんです。つまり、バリそのものが一定でないと、ロボットでのバリ取りが出来ないのです。
もう一度造型機の原点に返り、良い製品(中子)をどうしたら作ることが出来るかを、真剣に見直しました。そこで、造型機の充填性を高めることを考えたんです。
研究と見学を繰り返す中で、充填に見合う砂の量を整調し、準備することでうまく詰まるよという事例に出会いました。
砂をホッパーからブローヘッドに入れる過程に砂箱があるのですが、今までは「入っていれば良い」ということで多量に入っていたりしました。しかし、必要な量+αな量を入れた場合にうまく充填することが分かってきたのです。
事例では砂が足りなくなる一歩手前で良い製品が出来てくることが、ヒントだったんです。
これが良い製品が出てくる要因となれば、それを実現する為にホッパーからブローヘッドに砂を入れる時に、適正な量になるようにパイプを入れ、量を太さと長さで制御することにしました。
あるメーカーでは重量でそれを計算していましたが、砂を使っている以上、計量器の故障はふせぎようがないんです。
そこで、我々は一番シンプルなパイプ利用に決めました。これは最初にパイプの長さを決めるのが大変ですが、決まれば具合が良いんです。
また、ブローヘッドに入ってくる砂は、理想は平らに溜まるのが良いのですが、砂ですから山状に溜まっていきます。揺さぶれば平らになりますが、砂を二山にするなどの対処で、条件を良くするよう工夫をしました。
ブローヘッドは汎用のものを使っていますが、今は製品によって形状も変えています。それほど微妙なのが造型機。機械は汎用機でも、造型する製品に対応して専用化するという方針です。
 この原点に返った開発が、良い製品を生みました。これでバリ自体が安定化し、ロボットによるバリ取りの効率も高まりました。

 出来上がった中子は、専用の箱に入れてスズキさんに納入しています。それも、昔は1つの箱に同じ製品を入れて納入していました。しかし、1つの製品を作る過程で3〜4点の構成の中子が必要になるので、これを納入するとスズキさんでは鋳造機の周りに3〜4つの箱を置かねばならず、場所を取ってしまいます。
そこで、一つの箱にその過程で必要な中子3〜4点をセットで入れて納入するようにしました。これなら鋳造機の周りには一つの箱だけでよく、効率も高まります。
中子製造の方では、コンベアの上に箱を置き、その両側に造型機を配置するようにして、セットで入れやすくしました。この変更によって、従来の1製品1箱より、製造しながらセットが出来ることから中子の破損も少なくなり、セットし直しのロスもなくなりました。
このセットもロボットがやっています。

「搬送ラインというのはメーカーの納入条件から生まれたとも言えますね?」

 そうですね。搬送ラインを作ったことで、スズキさんとユニオンパーツ工業は目に見えないラインで繋がっていることになりました。
箱がなかったらうちはラインが止ってしまう。稼動日や休日も同じになります。これが工程的につながったラインといえます。
箱を介したカンバン方式になりました。
たくさん作ってもスズキさんのストックヤードより多く納入できるわけでもありません。


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